この記事では、米国の通信会社における業績と指標の比較をしていきたいと思います。
特に、その中でも規模の大きい「AT&T」と「ベライゾン」を比較していきます。
通信会社は割と安定して収益を上げており、株価も安定しています。
ベライゾンはバフェット銘柄に組み入れられてもいます。
これらの企業は高配当株としても有名で、特にAT&Tは35年連続増配をされています。
ただ、高配当だからという理由で株を保持するのは危険であるため、業績などを確認することは必須です。
なので、この記事を参考に検討していただければと思います。
AT&T | ベライゾン | |
株価 | 29.43ドル | 56.49ドル |
時価総額 | 2,121億2,940万ドル | 2,330億4,440万ドル |
決算月 | 12月 | 12月 |
(2021年5月30日時点)
1、業績
売上高
AT&T | ベライゾン | |
2020年 | 1,717億6,000万ドル | 1,282億9,200万ドル |
2019年 | 1,811億9,300万ドル | 1,318億6,800万ドル |
2018年 | 1,707億5,600万ドル | 1,308億6,300万ドル |
どちらも安定した売上を上げています。
AT&Tは先日ワーナーメディアを分割することを発表しましたが、株主の反応は若干良かったようです。
メディアの事業は前々から雲行きが怪しかったため、その事業を切り離すことに好感を覚えたようですね。
ベライゾンについては、米ヤフーの売却を発表しています。
どちらもメディア関連でなかなか苦戦しています。
また、今後は2社とも5G関連の売上が増えていくのではないかと思います。
営業利益
AT&T | ベライゾン | |
2020年 | 64億500万ドル | 287億9,800万ドル |
2019年 | 279億5,500万ドル | 303億7,800万ドル |
2018年 | 260億9,600万ドル | 222億7,800万ドル |
AT&Tはプレミアムテレビの事業において155億ドルの評価損、そしてワーナーメディアの部門において7.8億ドルの評価損を計上しており、営業業利益が大幅に下がっています。
ただ、これらは減損処理をしているためです。減損処理の場合、資産価値は減りますが現金が減るわけはありません。
なので、今回の大幅な下げは一時的なものと受け取って良いでしょう。
2、財務
自己資本比率
AT&T | ベライゾン | |
2020年 | 30.75% | 21.44% |
2019年 | 33.39% | 21.05% |
2018年 | 34.61% | 20.07% |
米国の主要500社の平均は約32%となっています。
AT&Tは平均付近、ベライゾンは下回っています。
ただ、米国企業はそれほど自己資本比率を重視していないので、株価への影響はそこまでないと見て良いでしょう。
フリーCF
AT&T | ベライゾン | |
2020年 | 274億5,500万ドル | 214億5,000万ドル |
2019年 | 292億3,300万ドル | 169億900万ドル |
2018年 | 228億4,400万ドル | 162億5,200万ドル |
CFも安定しています。
この辺りは、大手企業ということもありしっかりしていますね。
ただ、今後5Gへの事業投資やメディア関連の損失などが悪影響を与えないかは注視したいです。
3、指標
PER
AT&T | ベライゾン | |
PER | 12.84 | 12.38 |
どちらも似たような数字になっています。
そこまで悪い数字ではないので問題なしでしょう。
PBR
AT&T | ベライゾン | |
PBR | 1.27 | 3.28 |
こちらはベライゾンが高くなっています。
1倍が目安なのでだいぶ割高といえます。
ROE
AT&T | ベライゾン | |
ROE | △0.44% | 28.94% |
米国では特にこの指標が重要視されており、高い方が望ましいとされています。
こちらはベライゾンの方が優っていると言えるでしょう。
配当利回り、配当性向
AT&T | ベライゾン | |
配当利回り | 7% | 4.44% |
配当性向 | 50.8% | 54.65% |
どちらも利回りは高いですが、特にAT&Tは驚異的な数値になっています。
ただ、今年は減配される可能性もあるということで、インカムゲイン目的で保有している方にとっては痛手となります。
また、これだけ配当性向が高いということは、成長性は見込めないと考えられます。
これらの銘柄を検討されている方はキャピタルゲイン目的ではないかと思いますが、その点には注意しておきたいですね。
4、まとめ
以上が、米国高配当株として有名な通信会社2社の比較でした。
どちらも業績、財務ともに安定した数字を出しています。
ただ、指標の部分で見てみると、ベライゾンの方が効率的な経営をしているかな、という印象です。
また、2社ともメディア関連にて苦戦しているため、その辺りの損失が今後どうなるかは注視しておいた方がいいでしょう。
直近の四半期決算では、数字は悪くなかったため今後の決算も良い結果が得られることを期待したいです。